さようなら、スピードマスター

機械式の時計2台ももっているとオーバーホール代が馬鹿にならないこともあって、オメガのスピードマスター(Ref. 3523.80)を手放すことにした。
というわけで、生まれて初めて質屋なるものに行ってきた。
一軒目。アンティークな引き戸を開けると、目の前にカウンターがあって、その奥にはこじんまりした事務所がある。カウンターには、30cmぐらいの隙間があって、その上は透明のアクリル板が張られていた。ふーん、こんな風になっているのかぁ。防犯のためかな。
すいません、買取なんですけどと声をかけると、おばちゃんが奥からでてきた。「お客さん、初めて?」 「はぁ」。やっぱり、常連さんというものがいるらしい。で、「なんでこの箱こんなに傷んでいるんでしょうね」(ダンボールにしまってたら、いつのまにか箱の皮がめくれてぼろぼろになっていた)といいながら、箱からスピードマスターを取り出し、「いくらくらい、お入用?」いや、だから買取なんだって。「いや、高ければ高いほどいいんですけど」。おばちゃんは、奥に戻って、机の上にあった大量のファイルをとっかえひっかえ、めくり始める。「お客さん、これ定価いくらくらいだった?」 ん? あんたファイルで見たらわかるんじゃないの? ていうか、見つけられないのか? 最終的には、見つけたらしく、「これだったら、高くてもxx万円ね」といいながら、戻ってきた。事前に、メールで査定したのよりは高かったが、おばちゃん、ほんとわかってんの?と不安になって、もう1件他の質屋に行くことにした。

2軒目。今度は普通の事務所みたいなドア。あけると、さっきと同じように、透明アクリル付のカウンターがある。今度は、中年の夫婦らしき2人が事務所にいた。「お客さん、初めて?」 「はぁ」。やっぱり常連がいるらしい。早速、箱を取り出すと、「そうそう、オメガのこのころの箱ってすぐ湿気で傷んじゃうんだよね。うちのお客さん、みんなそうだよ」(夫) お、よくわかっているね。「おう、じゃそこのファイルとってくれ」(夫)といわれて、妻の方はファイルの中から探してはじめる。なかなか見つけられないのか、夫のほうが「これは、ダブルデートだから、これだよこれ」。お、ますますよくわかってるね。「お客さん、預かりにしてくれてもいいんだけど」(夫)。「いや、別にお金に困っているわけじゃないんで、買取で」ひょっとして、預かりのほうが質屋が儲かるのか?しばらく、時計をルーペで眺めていたあと、「んー これだと、xx万円で売れるから、オーバーホールに18000円かかって、うちの儲けを考えるとxx万円だね」(夫) お、さっきの店よりちょっと安いぞ。 「ほら、ヨドバシカメラだったら、これの新品がxx万円で売ってますよ」と、インターネットで調べたのかノートPCの画面を見ながら妻が言う。うーん、見事なコンビネーション。「いや、正直な話、さっきの店だったらxx万円って言われたんですよ」と言って、粘ってみた。夫は難しそうな表情だったが、妻のほうが「あなた、だったらxx万円にしてあげましょうよ」。お、ナイスフォローだ。で、結局夫のほうも折れてさっきのお店と同じ買取価格になった。さっきのお店でもよかったんだが、やっぱりよくわかっている人に売りたくなって、こっちに決定。最後に、「いや、これだと、うちはほんまに儲からないよ」。いやぁ、すんませんねぇ。
でも、これで携帯の買い替えと、iPod買うくらいの予算が確保できた。ラッキー