模倣犯

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

恐るべき宮部みゆき。おもしろすぎ。
以下、ネタばれあります。
1部から3部まで視点を変えて語る構成が抜群。1部(文庫本の1巻)の最後で、唐突に事件を終了近くまで進めてしまう。これで、ぐいっと物語に引きずりこまれる。
テーマも鋭い。現実に頻発している「劇場型」事件とそれを利用して視聴率を稼ぐマスコミに対しての批判とよめる。
それを示すように、もっとも興味深いバックグラウンドを持っている真犯人に対する心理描写、登場人物による憶測も含めて、非常に少ない。犯人の心理よりも、人の命の重さのほうが大切ということか。
最後に有馬義男が真犯人にぶつける「あんたがこんなひどいことをして殺したのは、あんたの言う"大衆"とやらのなかの、取替えのきく部品みたいなもんじゃなかった。」という言葉が重い。